アズカリ

アズの仮置き場。

向こう側に行けない男の話

僕は家を見ていた。 見ているのは 兄弟が住んでいる家。 日本家屋の立派なお屋敷だった。 しかし、僕は その家自体には興味がない。 隣の家との境目はどこだとか、 この溝はどっちの家のものだとか、 気になるのはそんなところばかり。 植木鉢に咲き誇ってい…

クラクションの鳴り響く街

その街はやたらと クラクションの鳴り響く街だった。 たえまなく クラクションが鳴り響く。 それを鳴らす理由は ただひとつ。 自分ではない誰かへの警告。 自分は正しくて お前は間違っているのだから、 それに気づけ とクラクションを鳴らす。 街全体が イ…

薬中

ここ数日の体調不良の原因は 肺炎でした。 一週間前から なんとなく体がだるかったのですが、 夏バテもしくは クーラー病だろう と考えていました。 おとついは 職場の冷房にあたっていると 震えるくらいに寒かったので 早退しました。 昨日は 適切に室温管…

役にたつ

八月に入って間もないというのに すでに地面でひっくり返って 息絶えようとしているものがいる。 皆が示し合わせたように 腹を空に向けている。 セミは実は 夏の暑さが嫌いなのだという。 「最近の夏ってのは 尋常な暑さじゃありませんよ。 しかも この木の…

小人のしわざ

車に乗ろうと 運転席のドアを開けたときのことだった。 「え?どういうこと?」 タマゴ大の大きさの石が そこに転がっていた。 石というよりも コンクリートのかけらのよう。 どうやって ここに入り込んできたのだろう? つい四時間前に車の運転をしたばかり…